WEB本の雑誌

第7回

 2歳4ヶ月を過ぎたあたりから、カイト、だんだんワガママになってきました。いよいよ「魔の2歳児」、キタ―――!

 とにかく自分のやりたいことをごり押しするのです。私がパソコンで仕事してるときにトコトコやってきて膝に乗り、画面を指差して「ママ、ママ、ママ、アンパンマン、見たい、見たい、見た~~~い~~~~!!!」と希望がかなうまで、100回でも200回でもごね続ける。言い出したら絶対に引かないのです。ああ、前にうっかりアンパンマンのホームページを見せた私がバカだったわ……。キミの気持ちはわからんでもないが、ママ今忙しいのね。お仕事してるのね。「カイちゃん、今ダメだってば、ちょっと待ってて」と言い聞かせてもまったく効果なし。無視してると、私の膝の上に立ち上がり、私のほっぺを両手で持ってぐっと自分のほうに向かせて目を合わせ、10センチくらいの至近距離で「ママッ!!アンパンマン、見たいっ!!」と天下の一大事みたいに真剣なまなざしで訴えるのです。その迫力と、あまりのおかしさについ根負けして「あ~もう、わかったよ……」とグーグルの検索窓に「アンパンマン」の文字を打ち込んでしまうダメ母……。

 他にも、もうご飯なのに「お菓子食べる~」とか、皆がコナンのテレビ見てるときに「ピングーのビデオ見たい~」とか、買い物終わってもう帰りたいのに「おもちゃ見る~」とか。彼の要求はとどまるところを知りません。

 先日はお風呂に服のまま入ろうとして、パパに怒られて号泣。あ、そうそう、最近怒られるとしょげるようになったんですよ。それまではどんなに叱っても「ん?どうかした?」ってカンジで平気でニコニコしていたんだけど。ようやっと怒られることの意味をわかってくれたか……キミ遅いよ、ニブいよ(笑)。で、その日は「カイト、ダメ! 服脱いでからお風呂!」と何度言われても聞かないので、ちょっとパパが雷を落としたのです。ほっぺをごくごく軽くぺちんして顔を手のひらではさみ、「ごめんなさいは?カイト、ごめんなさいは?」と詰問。しかしカイトはパパから目をそらして大声で泣くばかりで、絶対にあやまらない。なんて強情なんだ。「そんな悪い子はもういい!」とパパが業を煮やしてお風呂から出すと、「わあ~ん」と裸のまま泣きながら、私のいたキッチンまで脱走してきたけど、またパパに連れ戻されていきました。

 たったひとこと「ごめんなさい」を言えば許してもらえるってことがわかんないのか、それとも頑として自分の非を認めたくないのか。そもそも、怒られた原因をまったく把握してない気がするんだけど。ただただ、わけもわからずパパに叱られたとか思ってない、キミ? なんかそういうところ、男の子ってアホっていうか(笑)。そこがまたかわいいんだけど(親バカ)。もうちょっと大きくなれば、自分が悪いんだってこと、言い聞かせればわかるようになるかなあ。そしたらちゃんと「ごめんなさい」が言えるようになるかなあ。

 2歳児のワガママって、どう対処したらいいんでしょうね。果たして上からガーッと押さえつけていいものなのか。私がイマイチ躊躇してしまうのは、それが単なる大人の都合ではないかという懸念があって。子供があれやりたい、これやりたいというのは純粋なる好奇心だと思うのです。アンパンマンが見たい、服のままお風呂に入りたい。思いついたこと、なんでもやってみたいお年頃なのです。でもママの仕事が、とか服がびちょびちょになるから、というのは単にこちら側の勝手な都合を押しつけてるんじゃないか。

 もちろん、危険なこととか、公共の場でやっていけないことはびしっと叱りますよ。ガスコンロのつまみを勝手にひねっちゃいけないとか、デパートで走り回っちゃいけないとか、靴のまま電車の座席に上っちゃいけないとか。でもねえ、家の中で服がぬれるなんてレベルのことは、私がすぐにそれを洗濯機に突っ込めばすむ、といえばすむのであって。しかし、「自分は何してもいいんだ」とか「ごねればなんでも通るんだ」って思われるのも困っちゃうし……。そのさじ加減が難しい。子供は親の本気度をちゃんと見抜きますからね。こっちが躊躇してると「あ、ママ本気で怒ってないや」って一発でわかっちゃうからなあ。今後のためには、もっと毅然とした態度を取るべきなんでしょうか。

 このお風呂の一件は、さらに続きがあるのです。いつもパパと娘とカイトの3人で入ってるので、カイトが怒られたときも、娘は一緒に入ってたんですね。すると、あとからお風呂から出てきた娘がしくしく泣いているではないですか。びっくりして「どうしたの?」と聞くと、どうもカイトがあんまりキツく怒られてるので、かわいそうに思って、ということらしい。あらまあ。なんだかちょっときゅ~んとしちゃいました。やさしいところあるじゃん、お姉ちゃん! 別にあんたが泣くことないのよ。日頃「カイちゃん、邪魔」とか「カイトうるさい」とか言ってても、やっぱり弟思いなんだなあ。

 ダンナもあわてて「パパはちゃんと理由があってカイトに怒ったんだよ」と娘に一生懸命フォローしてました。「これからも、カイトやひーこがワガママ言ったら、パパがびしっと怒るからね」とクギを刺すところも忘れない。うん、そうだな、とりあえず私の手に余ったら、パパにキツーくシメてもらうか!父親の威厳を見せないとね! ママはすっかりなめられてるみたいだし……しくしく。