WEB本の雑誌

第12回

 カイトの以前の写真を眺めていたときのこと。確かに産まれたばかりの新生児顔もかわいいけど、今と比べると、なんだかへちゃむくれ。顔にブツブツもあるし、未完成というカンジがありありと。1歳児の頃は、なんだかほっぺに肉がつきすぎてて、デブというか、まあこれはこれでかわいいんだけど、どことなくおっさんっぽい(笑)。転じて今の顔。ほっぺがほどよい大きさになり、顔の形がまんまるに整ってきて、いかにも「やんちゃな男の子」という雰囲気。体と頭の大きさのバランスもよくなってきて、赤ん坊時代の4頭身から子供体型の5頭身くらいになってきて、つまりは、今がいちばんかわいい!

 不思議だなあ、新生児の頃も1歳の頃も「今がいちばんかわいい」って思ってたのに。2歳になってみると、やっぱり「今のほうがあの頃より、もっとずうっとかわいい」と思えるのですね。昨日よりも今日のほうが、どんどん愛しく思えてくる。この現象は、いったいいつまで続くんでしょうね。小学生くらいまで?考えてみたら、上のお姉ちゃんも、下が生まれるまで(小3)はかわいさを更新していたので、カイトは下が出来ない限り(そしてその予定はないので)もうずーっと永遠にかわいいのかも。

 小5のお姉ちゃんはふと気がつけば、今や私とほぼ同じ身長に。「かわいい」というフレーズはもう似合わないなあ。服のサイズも160だし(子供サイズはこれが最大、これ以上はもう婦人物)、あと1、2年で私を追い越して、仰ぎ見るようになっちゃうんだろうな……。なんか「立派になったものよのう……」とため息をついてしまいます。

 今、毎日朝から晩までカイトと一緒にいるわけですが、その1日1日が幸せすぎて、もうこのまま時間が止まってしまえばいい、と思うこともしばしば。よくSFで、同じ1日をずっと繰り返す話がありますけど、今ならそうなってもいい、いやむしろそうなってくれお願いだ!だって忘れちゃうんだもの!(笑)手からこぼれ落ちる砂のように、記憶はさらさらと失われていってしまう。それがなんとも惜しくて惜しくてならないのですよ。

 今のカイトのかわいさを、永遠に封じ込めておけたらいいのに。部屋の隅にカメラつけて24時間ビデオまわしといて、ディスクに永久保存しておきたいと真剣に思う今日この頃。私がビデオカメラを向けると、カメラをいじろうとしたり、照れてゲラゲラ笑ったりするばかりで、もはや普段の自然な姿が全然撮れないんですよ……。ほらカイト、「2歳」ってやってごらんってば!チョキだよ、チョキ!やっとこないだできるようになったじゃん! もう、撮っときたいのに、どうして今やってくれないんだよう~。

 幸せと言っても、ごくごく小さなことなのです。子供と暮らす幸福は、本当に何気ない小さな出来事の積み重ね。バースデーケーキ級の豪華で派手な幸せではないのですが、キスチョコ1粒ぶんくらいの小さな幸せがそこここに落ちている。その幸福を感じられるのは、日々苦楽をともにしている、親だけの特権なのかもしれません。言うこと聞いてくれなくてイラつくこともしょっちゅうだけど、それでも食事中に「ママのおひざ、すわる~」と言って膝の中にもぐりこんできたり、別室に行っててちょっとでも姿が見えないと探しに来て「ママ、いないかったから、びっくりしちゃったよ~」(「いなかった」ではなく「いないかった」と言うのがポイント)とやや心配そうな声で訴えてきたりすると、もうたまりませんよ!

 しぐさだけでなく、会話もますます面白くなってきました。先日、児童館で、まだ1歳くらいのお子さんを連れたお母さんが、べらべらしゃべり続けるカイトを見て「ああ、やっぱりおしゃべりできるっていいわねえ、お互いにコミュニケーションが取れるものねえ。何してほしい、とか言ってくれるしねえ」とおっしゃってましたが、そのとおりだと思います。やっぱり言葉のコミュニケーションは楽しい。たまに、子供がとんちんかんなことを言うのもまた愉快。

 子供って擬音を使うのがうまい。「パパ、プーしたね!」(おなら)とか、「ママ、これ、バタンしたね!」(物を落とした)とか、「ママ、でんきパッチンして!」(電気つけて)とか、現象をうまく言い表してて。カイトの作ったオリジナル用語もあって「ママ、カリンカリンして!」(食事のとき、椅子を前に引くこと)とか、「パパ、キシキシして!」(頭をシャンプーすること)なんてのも。「なるほど、そう使うか」と感心してしまいます。

 ママやお姉ちゃんの口真似もどんどんバリエーションが増えて、おもちゃで遊びながら「きょうのごはん、なににしよっかな~。う~ん、じゃあ、ごはん!」と言ってみたり(ママの真似)、「ああ、そうね、そういうことね!」とテレビ見ながらうんうんと知ったかぶりをしたり(これもママ)、突然「もうママにチョコレートあげないもん、ふんだ!」とつぶやいてみたり(これはお姉ちゃん)。いつも娘と「カイちゃん、それ誰の真似?おねえちゃんでしょ?」「何いってんの、ママじゃん!!」と責任をなすりつけあっています(笑)。替え歌も得意で、なんでも目についたものを口にするので、かなりヘンな歌詞に。「だんご三兄弟」の節で「おみず、おみず、おみず三兄弟~」とか。それじゃ水商売みたいだよ!(笑)

 でもふと思ったんですが、小さい子が周りの人たちの言葉を聴いて、それを同じ発音で真似できるのって、すごいことなのでは。「あ」って言葉を聞いて、「あ」って発音するとき、どうやったら同じ音を出せるのか(舌や唇をどう動かすか、とか)をちゃんとわかってるってことですよね。発声法を誰に教えられたわけでもなく。まあそれを生後2年間ほどみっちり訓練してたわけでしょうが。

 だけど子供によってそれぞれちょっと苦手な発音というのもあるらしくて、カイトはまだ「ゆきだるま」は言えません。「ゆーきゅーま、ゆーきゅーま」って何度も言われて、母は最初すごく悩みましたよ。そういう今だけの赤ちゃん言葉もまたかわいくて、「ああ、このままとっときたいなあ」と思ってしまうわけですよ!