WEB本の雑誌

第32回

 唐突ですが、理想の子供像について。
私の考える「理想の子供」は、映画「パンダコパンダ」のミミ子ちゃん。あるいは、「天空の城ラピュタ」のパズーとシータ。または「となりのトトロ」のサツキちゃん。って全部宮崎駿のキャラですが、要するに「自立してる子供」、「自分で自分のことができる子供」が私の憧れる子供像なのです。彼らはほとんど親や大人の庇護を受けていません。自分ひとりの力で生活しています(サツキちゃんはお父さんがいますが、でももし仮にいないとしても、この子はちゃんとやっていけると思う)。そのなんという力強さ、たくましさ。そして彼らはなんと自由なのでしょう。

 あまりひとくくりにはできませんが、おそらく私の世代は、小さい頃から親に「お手伝いなんてしなくていいのよ、いいからあなたは勉強してなさい」と言われて育った人が多いのではないでしょうか。勉強さえできれば、いい学校に入れて、いい会社に入れて、出世できると。確かにある意味そうかもしれない。でも、そのあとは? 勉強だけやってて、果たして「生活力」は身につくものでしょうか?

 実にお恥ずかしい話ですが、私がそのことに気がついたのは、なんと結婚1日目でした……。そうか!これからは何もかも、部屋に落ちてるゴミひとつでさえも、自分で拾って捨てなければ永遠にそこにあるままなんだ!ってことに気がついたのです。今まではそういう些細なことも、すべて親がやってくれていたんだと、初めて悟ったのです。しかし、もはや遅すぎましたよ。いくら勉強や仕事ができたって、そういうスキルは、家のこと・生活のことには何の役にも立たないのです。生活というのは、まずご飯を作ること、部屋やトイレの掃除をすること、服や靴を洗うこと、なんですよね。

 そしてさらに大事なこと。そういう生活のスキルは、親が教えなければいけない。だってそうでしょ、勉強や仕事は、学校や会社が教えてくれます。しかし、家のことは、よそ様は誰も教えてくれないですよ。一緒に暮らしてる家族から教わるしかないのです。が、残念ながら、私は何も教わらずにきてしまいました。「家のことは、(女の子は)将来いやでもやらざるを得ないんだから、今はやらなくてもいいわよ」と言われてずっと育ってきたのです。しかし実際自分が主婦になってから、それは大きな間違いだったのではないかと感じています。まず、家事のやり方がわからない。ゆえにイチから独学で勉強しなければならないので、効率よくできるようになるまで非常に時間がかかる。そして慣れてないから、家事がものすごく負担に感じてしまうのです。

 そういった自分の経験を反面教師として、私は、うちの子は「何でも自分でできる子」に育てたいと強く思うようになりました。勉強なんて、そこそこできればいいのです。因数分解なんて忘れても、生活に支障ありません。しかし、ご飯が作れなければ生活に支障をきたします。外食すればいい? いえ、それではカラダを壊しますよ、長い目で見れば。栄養バランスのよいメニューひとつにしたって、親がどういう野菜をお味噌汁に入れて作ってるか、とかそういうことを実際に見て、自分の手で材料切って作らないと覚えないと思うのです。とにかく、何でもやらせる。部屋は掃除しなきゃキレイにならない、洗濯した服は干したら取りこんでたたんでタンスに入れなきゃならない。当たり前すぎるほど当たり前の話ですが、生活ってこういうことなんだ、ということを教えておきたい。いつ何があっても自活できるように。どこででも暮らせるように。ひたすら雑草のように、強く、たくましく。まだ小さいうちから、家事に慣れさせるようにしたい。

 で、実のところ、我が家がどうしているかと言いますと。まず、上のお姉ちゃんはお風呂洗い、洗濯物の取り込み、食事前のテーブル拭き、ご飯やお味噌汁を盛り付けて運ぶ、食べたお皿を運ぶ、このあたりは毎日やらせています。週に一度は料理もさせたいのですが、これはやってる週とやってない週があるかな。もっとまめにやらせなきゃいけないんだけど。週に1、2回は自分の部屋の掃除機がけもしています。しかしまだまだこっちが言わない限りやらないので、「ほら、8時になるよ!お風呂洗って!」などとお尻叩かないと動かないのですが。まあそれでも、やってくれるだけいいと思おう。

 カイトにも、ご飯の前にはお箸を運んでそれぞれの家族の座る位置に並べる、簡単なお惣菜をキッチンからテーブルまで運ぶ、などをやらせています。最近はますますお手伝いに興味が出てきたようで、先日は「カイもおてつだいする!」と自分の椅子をキッチンの流しの下に持ってきて踏み台にして、じゃがいもの皮むきをしてくれました。手を切らないかとハラハラドキドキものだったのですが、なんとか無事成功。出来上がったカレーを食べながら「このじゃがいも、カイトくんがつくったんだよね~」と本人も満足げ。「うん、カイちゃんのむいたじゃがいも、すっごくおいしいね」とほめるとうれしそうにニコニコ。不思議なことに、子供って、自分の作ったものは苦手なものでもぱくぱく食べたりするんですよね。まあもともとカイトは野菜大好きだけど。

 子供と一緒に家事をやるのって、けっこうコミュニケーションになって楽しいんですよね。ついでに「今日学校でこういうことがあったんだよ」とか「友達でこんな子がいてね」、とかいろんな話ができるし。今のところはまだまだいろいろしゃべってくれるけど、中学になったらどうなるかなあ。反抗期に突入して、何もしゃべらなくなったりして。それでも、この習慣はずっと続けたいと思っています。本当は上履き洗いとか、食器洗い機の使い方とか、洗濯物たたませるとか、まだまだやらせたいこといっぱいあるんですが。いや、決して自分の手抜きのためではないですよ!……って全然説得力ないかな。ほほほ。