WEB本の雑誌

第13回

 今回は、お姉ちゃんの成長ぶりについて。

 前にも書いたと思いますが、小学5年生になってから、彼女は外見がぐっと大人びてきました。身長も今や私と5センチくらいしか変わらず、靴も私の24.5に対して24センチにまで追いついてきました。顔つきも子供くささが抜けてどことなく少女っぽくなってきて、それは他人から見ても歴然と違うのか、もうデパートの女子トイレで「あら、男の子はこっちじゃないわよ!」と見知らぬおばさんに言われることもなくなりました。

 カイトは毎日朝から晩まで一緒にいるので、その成長の過程をつぶさに観察・発見できるのですが、お姉ちゃんは学校に行っているので、考えてみれば半日も一緒にいないんですよね。朝ちょっとと、あとは夕方~夜の4、5時間というところ。だから、気がつかないうちに「あれ、もうこんなになったの?」と驚かされることが多いです。

 松本に引っ越してきてから、娘は学校の友達を家に連れてくることが多くなりました。週に2、3日は必ずといっていいほど、誰かしら遊びに来ています。もちろん、自分がよその家に遊びに行くことも。実は「放課後に友達と遊ぶ」のが彼女の以前からの夢だったのです。が、小1、小2の頃は私がフルタイム勤務だったため、夜6時半までずっと校内の放課後ルームに拘束されていて、それがすごく不満だったらしくて。3年生になって私が退職して家にいるようになってからは、念願かなって毎日3時過ぎに「ただいまー!!」と元気いっぱいで帰ってきては、友達と遊ぶように……と思いきや、今の子ってみんな習い事が多くてすごく忙しい。ひとりで3つ掛け持ちなんてのはざら。スケジュールのあいてる日が1週間で1日だけ、なんて子も。だったらまだ放課後ルームで友達と遊んでたほうがマシだったのでは?結局、友達と遊ぶのは週に1日くらい、なんて状態に。そしてつまんなくて母にからむ(笑)。やめてくれ~。4年生からはバスケ部に入ったこともあって、今度は娘のほうも忙しくなってしまい、友達と遊ぶ機会はますます減ってしまいました。

 遊べないのに懲りたのか松本では部活にも入らず、定時に帰ってきて、玄関をバタンと開けるや「ただいま~!友達も一緒に連れてきた~!」なんてことがしょっちゅう。こちらの子たちも習い事が多いのですが、どうも親が共働きの子も多いらしく、放課後は親が帰ってくるまで家で留守番なのでヒマ、なんて子も。娘はそういう子たちを誘っては家に連れてきて、仲良く遊んでいるようです。お互いお菓子を持ち寄って、ゲームしたり、トランプやウノをやったり。ミシンを持ち出してなにやらごそごそ作っていたり、お絵描きしたり、マンガ読んだり。

 女の子のせいか、娘が友達と遊んでいるところを見るのは、まるで昔の自分を見るようで、なんだかひどく懐かしいのです。ああ、私もやったやった、その遊び。そういえばあの頃毎日のように一緒に遊んでたあの子、今どうしてるかなあ、なんて当時の親友(これまた懐かしい響き)を思い出したり。DSやプレステこそなかったけれど、トランプやったり、貸し借りカード作ってマンガの貸しっこしたり、習ったばかりのかぎ針編みで小物作ったりしてたなあ。今のひーこと変わんないよ。必ずお菓子持ってくるのも同じ。

 私、自分の小学3年生までの記憶ってほとんどないか、あってもうすぼんやりなんですが、不思議と4年生からの記憶はかなり鮮明なのです。ちょうど今のひーこのお年頃。ついこの間のこと、とまではさすがに言わないけれど、思い出そうとすればあの頃の情景がすぐに記憶の宝箱からざくざく出てくる。数字的に言えば30年前の話なんだけど、自分の中ではそんなに「昔」という気がしないのです。なのに、今、自分の子供があの当時の自分と同じことしてる。あの頃の私がここにいる。そう思うと、なんとも不思議な気持ちに打たれます。ああ、時間は流れているのだ、と。娘が自分に追いついてきているというのは、実に感慨深いです。これからさらに中学・高校と進むにつれ、その思いはさらに深くなるのでしょう。ってそんなことまで考えるのは気が早すぎるかな? いえいえ、たぶんそれもすぐのこと。

 小さい頃、「ママ~、あそんで~」と何かにつけまとわりついてきて、ママが世界の中心だった娘が、いつのまにか親でなく友達と遊ぶようになり、また自分ひとりで絵を描いたり(「ママ、見ちゃダメ!」と最近は何を描いてるか見せてもくれません)マンガ読んだりと、徐々に自分の世界を確立するようになってきた姿を見るにつけ、ああ成長したなあとつくづく思います。ここまで来るのに10年かかったか。ときどき「大きくなって子供が離れちゃうとさみしいわよ」とか「甘えてくるうちが花よ」という親の言葉を耳にしますが、私はあまりそうは思いません。むしろ「早く離れてくれ~、自分で自分のことができるようになってくれ~」とずっと思っていました。今でもそれは変わっていません。

 親の人生と子供の人生は別、というのが私の考え。子供は決して親のモノではなく、確固たる別の人間、他人なのです。子供はもちろん大好きだけど、子供が私の人生の“すべて”ではない。私には私のやりたいことがまだまだいっぱいあるし、子供にだって子供のやりたいことがあるはず。どこでも好きなところへ行き、自分の選んだ道を、強くしっかりと進んでいってくれればそれでいい。たとえどんなに離れても、何があろうとも、あなたが私の愛しい子供だという事に変わりはないのだから。帰ってくる場所はここしかないのだから。

 しかし、私が気に入らないことを言っただけでメソメソ泣いたり、ぐずぐずワガママを言ったりと、ひーこはいまだに甘ったれで手を焼くところもいっぱいあります。でもなんだかんだ言いながらも「この子はいい子に育ってるよね」と、親バカ夫婦は夜、娘の寝顔を見ながらそっと言い合ったりしているのです。