WEB本の雑誌

第28回

 さて、連載第24回で書いた再就職活動ですが、この秋を目標にぼちぼち動いておりました。職種は最初から決めていたのです。「書店」。まあこれしかできない、というのも事実なんですが、胸に手を当てて、「自分の今一番やりたい仕事は何か?」と問うたらやっぱり「本屋」しか出てこなかった。あんなにしんどい思いをしたというのに、そして私がやめた3年半前と比較してもますます業界全体に厳しい状況になっていて、今後もっとつらくなることもわかりきっているのに。それでも、どうせ同じ時間を費やして仕事をするんだったら、やっぱり自分の好きなもの、「本」にさわっていたい。なにがしか、本に関わるものに携わっていたいと思ったのです。

 カイトが3歳になるまで保留していた雇用保険をもらいに、今年の4月からハローワークに通っていたのです。しかし、そこのパソコンでひと月に2回ほど求人情報を検索してみても、営業・販売業となると服飾や食品関係ばかりで、書店なんぞ1件もなし。まあそうだよなあ、今、どこも人員削減してるよなあ。ハローワークの相談員さんに尋ねてみたところ、「そうねえ、職種をひとつに限っちゃうとね。特に本屋さんってのはなかなか出てこないのよねえ。あとは前の仕事でのコネとかね。」う~ん、やっぱりそうですか。自宅でもネットであちこちの書店を検索して、求人情報を探してみましたが、やっぱり近場はほとんどなし。

 7月に思い切って知り合いの書店に電話をし、面接を受けました。しかしあいにく諸事情により不採用。かなりがっくり……。やっぱり再就職って厳しいんだ……。最終的にダメもとで叩いた扉は、17年働いた、元の職場でした。しかしネットの求人を見ると、私の希望するようなパートタイムは募集してない。絶対無理だろうなあ、と思って半分以上あきらめの気持ちで電話をしたのですが、意外や意外、話を聞いていただけることに。そして面接の結果、無事9月からの採用が決まったのです! やった!!

 となると、次は保育園の申し込み。不思議なことに、就職先が決まってないと、保育園には入れてくれないのです。たとえば私は9月から働くことが決定した時点ではじめて、9月からカイトを預けるため、8月10日までに市役所に申し込みをすることができるのです。保育園の内定が降りるのは8月22日。が、もし空きがなければ、ここで「9月は入所できません」という通達が来てしまうわけです。ええっ!? そしたら9月から働けないわけですよね? それってどうしたらいいわけ? 会社に頼み込んで保育園が空くまで待ってくれっていうの? そんなの速攻クビに決まってるじゃん。親としては、本当は子供の預け先がちゃんと決まって(それだって第一希望の保育園とは限らない)、何月何日から働きに出られるかってことが確定してから、安心して仕事を探したいのに、社会のシステムはそうなってないのです。うーん、これは困りますよ。ほとんどバクチ。

 7月末に市役所に電話で問い合わせてみたところ、私の希望する、家から一番近い保育園の3歳児の空きは、なんとたったの1名。ひょえ~、なんという狭き門! 他にたとえば母子家庭の方や、フルタイムで働きたいというお母さんがいらしたら、パートの私がハネられることは確実。ヤバイ……大丈夫なんだろうか……。第2希望の保育園は、ちょっと遠いんだよなあ。あの道、交通量が多いのに道路がすごく狭いから、あそこを毎日自転車でカイトを乗せて走るのはかなり不安だし。しかしこればっかりは、己の力ではまったくもってどうしようもない。運を天に任せるほかないのです。

 そして8月22日、保育園の内定が出る日。翌日になれば封書で届くのですが、とてもそれまで待ちきれず、朝イチで市役所に電話。結果は……第一希望の園に内定が決まりました! やったー!! カイト、キミは運がいいぞ!

 翌週、母子ともに保育園の説明会に参加。9月から入所するのはカイトのほかにはまだ1歳に満たない赤ちゃんが2人でした。しかも、どちらも上のお子さんがすでに同じ保育園に通ってる様子。うわあ、お母さん大変だわ、ってひとごとじゃないよ。園長先生のお話を聞いたのち(しかしその間も横で遊んでるカイトがうるさいうるさい!)、ベテランとおぼしき担任の先生と詳しく面接。カイトはトイレトレーニングの途中でまだウンチがうまくできないとか、牛乳が嫌いとか。するとそれを聞いてたカイト、横から「あのねー、カイがきらいなのはねー、ビール!!」。や、好きだったら大問題だから!(笑)いいからキミは黙って遊んでてください。

 保育園のやり方は、まあ以前ひーこが通ってた頃と特に変わりない様子。着替えやタオルをロッカーに入れておくとか、連絡帳を教室の後ろのポケットに入れておくとか。カイトはというと、はじめての保育園にもなんら臆することなく、いつものように脳内思考だだもれ状態で、ひとりでべらべらしゃべりながら遊んでいました。珍しいオモチャがいっぱいあるので、あれもこれもいじってみたくて、もう目がキラキラ輝いてましたよ(笑)。面接中も、手当たり次第に積み木やパズル、布のおままごと道具に汽車ぽっぽ、とあれこれ引っ張り出しては遊びまくっておりました。ふむ、物怖じしないのはなかなかいいかも。先生いわく、「今はお母さんがいますから、きっとリラックスしてると思うんですけど、これでひとりだけになるとまた違うんですよね。お子さんには2種類いて、最初に別れ際に大泣きする子と、すんなり入って夢中で遊んでて、途中ではっと気がついて“ここはどこ、私は誰?”状態になっちゃう子といるんです。保育園に慣れるのが早いのはむしろ前者。後者の子は、ひどいと1ヶ月くらい引きずるんです」。ああ、ひーこは確かに前者だったわ。最初の3日間は、朝別れるときに号泣したけど、そのあとはもう平気だったんだよね。カイトはマザコンだしなあ、どうかなあ……心配だなあ……。こればっかりはやってみないとわからないな。カイちゃん、保育園に早く慣れてね。ママの身勝手な望みで申し訳ないんだけれど。