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第9回

ふたりの育児 第9回

 2歳半になるや、カイト、いきなり第一次反抗期に突入いたしました。

 多感な中学生の頃の第二次反抗期なら、私にも身に覚えがありますよ。大人の社会が汚く見えて、大人の言うことが欺瞞に思えて、何もかも腹が立って仕方なかった。妙な正義感振りかざして。とまあ、その年代の反抗には自覚があるし、意味があると思うんですよ。しかし、2歳児ってまだ自分で何もできないし、世の中わからないことだらけでしょ? なのになんでそう反逆スイッチが入ったように何から何まで反抗するわけ?どういう理屈で? もう見てて面白くて仕方ありません。

 たとえば夜、「カイちゃん、そろそろお風呂入ろうか?」と水を向けると、ぶんぶんと首を振って「ううん、はいんないよ」という返事。お昼時に「ご飯にしようか?」と言うとやはり首を振って「しないよ」。テレビ見てて「あ、くまさんだ」と言うと「NO!」というサインのように右の手のひらをびしっと私に向けて真剣な顔で「ママ、ちがうよ」。違わないって!あれはくまさんだよ!(笑) ほかにも私が何か言うと、「ママ、~じゃないよ」と返す。「~」の部分は、いつも省略して言います。本人、頭の中で思ってはいるんだけど、うまく言葉にならないみたいで。「やだ!や~だ~か~ら~!」など、とにかく、何から何までこっちの言葉を否定したいんですよね。とりあえず、「イヤ」という意思表示をしたいらしい。

 でも別に、本当にお風呂がイヤというわけではなさそうだし、ご飯を食べたくないわけでもないのね。お風呂に連れて行って服を脱がせれば普通に入るし、ご飯も用意すれば素直に食べる。じゃあなんで!なんでイヤだって言うんだよキミは!?(笑) いったいどういう理由があって言ってるのかなあ。おっかしいなあ。

 「なんかお菓子食べる?」と聞くと、間髪いれずに「ううん」と首を振ったあと、はじめていわれた言葉の意味が脳に届いたらしく「あ、しまった」という顔であわてて「うん、たべるよ」と言うことも。あんた、何も考えないで脊髄反射で言ってるでしょ! その思考の過程が全部、こっちからは丸見えで、もうおかしくてたまらない。

 中学生あたりの反抗期だと親とモロにぶつかって大ゲンカ、なんて事態にしばしばなるけど、2歳児の反抗は無害なので、ただひたすらおかしくてかわいいです。腹も立たない。お釈迦さま(私)の手のひらで暴れてる孫悟空状態。お姉ちゃんはこういうの、特になかったのでなおさら興味深い。対処法としては、特にムキにならずに、余裕の笑みで「あっそう」と受け流しています。笑ってスルー。子供にもよるのかもしれないけど、カイトの場合は「どうしてもイヤ」というわけではなさそうなので。手足じたばたさせて、「やだやだー、おふろはいらないー!!」とそっくりかえって暴れる、なんてことはないのですよ。彼が心の底からイヤがるのは、綿棒によるハナクソ取りだけ。これだけは絶叫して逃げます(笑)。

 せなけいこの傑作『いやだいやだ』(福音館書店)の絵本を読んであげたりもしましたが(主人公の女の子が反抗期で、なんでも「いやだいやだ」と言う。じゃあママもおひさまもおかしもいやだって言うよ、それでいいの?という話)、カイトには全然ぴんときてない様子。う~ん、まだ理解できないのか……。まあいいや。で、この2歳児の反抗期って、いつ頃になったらおさまるんでしょうかね?

 でも最近は、怒られると「ごめんなさい」もだんだん言えるようになってきました。言えないときは、「もうしない?」と聞くと「しない」と答えたり。おお、成長したなあ。ある日、カイトと全然関係ないことで私が怒ってカッカしていたら、そばに寄ってきて顔をのぞきこみながら「ママ、ごめんね」と言ってきたときには胸がきゅーんとしましたよ! ごめん、カイちゃん!キミのことで怒ってたんじゃないのよ。ママが怖い顔してるのがいやだったんだね。不安にさせちゃってごめん。もう、そんなこともわかるようになったんだね。ママのウソ泣きは通用しないけど、本気で怒ってるのはちゃんとわかるんだね。やっぱ子供って、あなどれないなあ。だませない。

 きっと、この反抗も、成長の一過程なんでしょうね。親に逆らってみたい、のかなあ。自我の表明?「ボクはママのあやつり人形じゃないやい!」って言いたいのかなあ。そういえば最近は「カイちゃんがやる!」というセリフもよく出るようになってきました。エレベーターのスイッチを押す、タオルを取る、自分のコップをキッチンまで運ぶ。幼いながらも、自立の芽が出てきたってことなんでしょうか。