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第34回

 外で働くようになると、夜の飲み会も自然と増えてきます。おつきあいといいますか、やっぱりただ会社に行っているだけではどうしても補いきれない仕事上のコミュニケーションを取る場、というものが必要になってくるのです。特に年末年始は忘年会だの新年会だの、と予定がたてこんできます。でもすべてに参加するのはさすがに家族からヒンシュクをかうので、涙を飲んで重要頻度の高いものからチョイス。ママ、飲み会大好きなんだけどね……うっく。とはいえ、カイトの妊娠・授乳期にほとんど禁酒していたし、その後も家で飲むことはほとんどなかったので、もうすっかりお酒には弱くなってしまったのですが。えーと、ほぼ5年くらいご無沙汰してるのか?

 しかし母親の夜の外出における最大の問題は、なんといっても子供たち。お姉ちゃんはもう自分のことはひととおりできるからいいとして、カイトがね……。なにしろベタベタのマザコンで、甘ったれた声で「カイト、ママがいないとねむれないの」なんてかわいいことを言いますからね。うう、うれしいけど、たまにはパパの添い寝でもいいじゃんよ~。ってこのへんが親の身勝手さだってことは重々承知しておりますが。

 まずは日程が決まったら、早め早めの根回しが重要。パパが帰宅するのは日によってまちまちで、すごく早ければ7時過ぎ、でも遅いと10時過ぎることも。なので、あらかじめ「この日は悪いけど、なるべく早く帰ってきて」と頼んでおき、それから義母か実家に電話。「すいませんけど、忘年会があるので、この日の夜7時くらいから来てもらっていいですか? あ、ご飯は作っていきますので。お風呂はひーこがやってくれるから大丈夫」とか。いやもうご近所に親がいるのは本当にありがたいです。っていうか、いなかったら夜に家を開けるなんて絶対無理だったよなあ。いつもいつもすみません……。

 こういっちゃなんだけど、ホントはもっとパパが「ああいいよ、君がいない間、子供のことと家のことは僕が全部やるから安心して。たまにはゆっくり飲んでらっしゃい~」と気軽に送り出してくれるとうれしいんだけどなあ、なんてのはこちらのワガママでしょうか。いや彼は決して「行くな」とは言わないし、私の不在中もちゃんと子供の面倒見てくれるし、お皿も洗っといてくれるしで実に完璧なダンナなんだけど、なんかこう積極的ではないといいますか、仕方ないなあ感が漂ってるといいますか。私が夜に帰宅してもそこはかとなく機嫌がよろしくないので、こちらも毎回非常に後ろめたいのですよ……。

 当日。まずは実母か義母に、私が出かける15分前くらいに来てもらい、あれこれ連絡や打ち合わせをしつつ、カイトに見つからないようそっと家を出る。一度、パパがいる時に大丈夫かなあと思って「いってきまーす」と声をかけて家を出たら、カイトに大泣きされて大変だったことがあるので。「ママさがしにいく~」と号泣して、パパとぐるぐる15分くらい近所を歩き回っていたそうです。ごめん、カイト……。

 しかし、ここ最近はお姉ちゃんが非常に大人になりまして。先日、義母が来てくれた時など、カイトのご飯の世話からお風呂の世話、着替え、あげくは手を握って一緒に寝かしつけてくれるまで全部やってくれたそうなのです。「もう、あたしなんかぜんぜんやることなかったわよ! ただ見てただけ。ひーこがカイトのこと、ぜーんぶやってくれたの!すっごくいいお姉ちゃんっぷりだったわよ」と義母もびっくりしておりました。いつの間にそんないい子になったんだ?

 そういえば、このところ、カイトと二人並んでコタツに入って、楽しそうにニンテンドーDSで遊んでいたり(カイトは横から覗き込んで見てるだけで十分満足らしい)、絵本を読み聞かせているのを見かけるようになりました。ちょっと前まではカイトが寄ってこようものなら「カイト、邪魔!こっち来るな!」なんて叫んでいたのに。何か最近、「お姉ちゃん魂」もしくは「母性本能」に火がついたのでしょうか。「カイト、か~わいい~~~! まつげ長いよねえ、男の子なのに」なんて言いながらむぎゅーと抱きしめたりもしてるし。

 そういえばひーこ、最近はあまりぐずぐずと親に文句も言わなくなったなあ。本人も、「もう反抗期は終わったんだ」なんてつぶやいていたので、何か親の知らないうちに、ひとまわり成長していたんでしょうか。あ、でも唯一困っているのは「ケータイ買って」攻撃。塾に行ってるわけでもないし、まだ全然必要ないって言ってるのに、これだけはぶーぶー言うんだよなあ。「皆持ってるんだよ!クラスの半分は持ってるんだから」とかなんとかお決まりの常套句。皆ってどうせ2、3人のくせに(笑)。「じゃあ何に使うのよ?」「メールとか」「誰と?いつも会ってるクラスの子なら、メールじゃなくてじかに話しなさい」「じゃあ、もうずーっと買ってくれないの?(怒)」「そのうち買ってあげるわよ」「そのうちっていつなの!?中学になってから?中学何年生のとき?」あーもーうるさいうるさい!!

 まあそれはともかく、母の不在時には非常に頼りになる戦力となっているようで、お姉ちゃんには大感謝ですよ。まんまとこちらの思惑どおりに育ってくれたわ、ふっふっふ(黒い笑み)。夜の11時すぎにそっと帰宅して、ダンナにお礼を言いつつ2階に上がり、寝室ですやすや寝ている子供たちの寝顔を見ると、「よかった、無事にいい子で寝てくれたか」とほっとします。今夜はごめんね、さみしい思いさせちゃって。でもママにはどうしても必要なことだったの、許してね。仕事も家庭もどっちも大事で捨てられない、中途半端なダメ母だけど、これが君たちのお母さんなんだよ。これも運命だと、どうかあきらめておくれ(笑)。そしてママがいなくても寝られるような強い子に育っておくれ。そばにいなくても、ママはいつもあなたたちのことを一番大切に思っているからね。