WEB本の雑誌

第19回

 千葉に戻ってきて以来、カイトは嬉々として、毎日近所の子供たちと遊びまくっております。しかし、ちびっ子どうしで遊ぶというのは実はなかなか難しい。年を取ると人間丸くなると言いますが、なにしろ当方2歳児。まだ全身ガッツンガッツンの角だらけなわけです。まるで遠慮なしの、自我と自我のぶつかり合い。しょっちゅうケンカしてはすぐ忘れて仲直り、の繰り返し。まあ本人たちはそれでじゅうぶん楽しそうなので、いいんですけどね。

 カイトは松本ではたいていひとりで遊んでいたので、それまで身近にあるオモチャはすべて自分のものだったのです。ゆえに人のもの、という概念がなく(あれだけ毎日お姉ちゃんのものをさわって怒られているのになぜ?)、自分のものと他人のものの区別がつかないのです。「お前のものはオレのもの、オレのものはオレのもの」状態。お友達がアンパンマンのボールを持っていれば、「かして~、かして~」と言って奪い、「これね、これ、カイのだから」とママに申告に来る。いや、それ違うから!キミのじゃないから! そして貸してもらえないと、その理由が理解できずに怒ってわんわん泣き叫ぶ。こ、こんなにワガママなヤツだったとは……。周りのお友達がやさしいからいいようなものの、こんなんじゃ、そのうち誰も遊んでくれなくなっちゃうよ? 早く、「人のものは人のもの」ってことに気がついてくれよ~。さほど執念深くはないので(おそらく単に「とりあたま」なので)「ほらカイちゃん、こっちの三輪車で遊ぼうよ」などとちょっと別のものに気をそらせば、すぐに忘れてほかの遊びに移行してくれるのだけが唯一の救い。

 今好きな外遊びは「ボール遊び(地面を転がしてキャッチ)」、「しゃぼんだま(シャボン液がなくなるまでひたすらやり続ける)」、「チョークで道路にお絵かき」、「三輪車(まだペダルはこげないので足でちょこちょこ地面を蹴って移動)」、「かけっこ」、「股くぐり(ママの足の間をくぐる)」、など。あとは「握手」と「むぎゅー(ハグ)」が好きなので、誰か子供に会うとやたら相手に握手を求める。欧米か!(笑)朝、お隣の4歳のお姉ちゃんの幼稚園バスのお見送りにつきあうのも大好き。他にも園児やその兄弟のちっちゃい子たちがいっぱい来るのが楽しいらしい。

 家の中で好きな遊びは「ブロック(猛烈に好き。ひたすらはめては外す、を繰り返している。端から見ると延々と同じことしてるだけにしか思えないが、いくらやっても飽きないらしい)」、「おままごと(とにかくちまちまと小さいものが大好き。後片付けがむちゃくちゃめんどい)」、「絵本(ちょっとした子供向けのクイズやパズルのついた雑誌が好き。「ね~ね~」とか)」、「ぬいぐるみ遊び」、「テレビ・ビデオ視聴(今ハマっているのはウォレスとグルミット、トムとジェリー)」など。30ピースくらいのボードパズルもできるようになってきたかな。

 あまり激しい性格ではないので、「おとなしくて安全な子」と周囲には思われていますが、これでけっこう相手には負けてないということが最近判明。お姉ちゃんとのケンカなんてすごいですよ~。いやはや、実際産んでみるまで、2歳児と11歳児でも同等にケンカするとは思わなかったなあ。こんなに年が離れていれば、ケンカは皆無だと思ってた私が甘かったか。ていうかお姉ちゃん、大人げないよ……(笑)。しかし彼女に言わせると「2歳だろうとなんだろうと、カイトは兄弟だから平等だもん」だそう。それはそうだけどさあ、まだいろいろわからないんだから手加減してあげてよね……。

 例によってお姉ちゃんのものをいじったり、お姉ちゃんにいきなり後ろからじゃれつくたびに「カイト!!!」とすごい迫力で怒鳴らるわ、ぶたれるわという目にあっているのですが、彼は決してひるまない。1度殴られたら、泣きながら2度殴り返すという負けん気の強さ(笑)。いやあ、2人目はたくましいわ! むしろ上であるお姉ちゃんのほうが打たれ弱いかも。親に怒られるとすごくへこみますからね、お姉ちゃんは。

 彼としてはまったく悪気なく、そのへんにある興味深いものをいじったり、お姉ちゃんが好きだから抱きついたりしてるだけなのに、どうしてそれで怒られるのかが全然わかってないんだろうなあ。ぶたれた理由がわからず、ただ理不尽に殴られたことに逆に腹を立てて殴り返していると思われ。本当はほうっておけばいいんだろうけど(私の母は兄弟ケンカに関しては完全放置主義だった)、私はそこまで器が大きくないのでついつい「お姉ちゃん、やめなさーい! 2歳児相手に何やってんの!」と口を出してしまいます。そうすると悪者にされたお姉ちゃんは面白くない。「だってカイトが!」と私に食ってかかってきて、今度は親子ゲンカのゴングが鳴り響くというのがお決まりのパターン。はあ……。

 まあ、兄弟とあれこれ揉まれて育つのはいいことだと思いますよ。親からは教わらない「同等」という概念を体験的に学ぶことができるので。兄弟は、子供が人生で初めて出会う「ライバル」ですよね。互いを意識しあい、競いあって伸びてゆく。人間、ある程度の競争心は必要ではないかと。ひとりっ子はのんびりお菓子食べてても取られることはありませんが、兄弟がいると早く食べなきゃ自分の分がなくなっちゃいますからね! そりゃたくましくもなろうというもの。今は毎日ケンカするような仲でも、大きくなればすごく仲良しになるということもあるし。

 そんなカイトも4月19日でめでたく3歳になりました。誕生日の朝も起きるやいなや「カイ、ケーキたべないから!」と宣言するような相変わらずのバリバリ反抗期ではありますが。これ、いつ治るんだろう……? あ、もちろん夜はちゃんとバースデーケーキを家族みんなで食べましたよ。反抗といっても口だけ、というのが3歳児のかわいいところ。