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第3回

 この連載エッセイのタイトルについて。
 売れている本の追加注文などで、出版社に電話をかけることがままありますが、なになにの本を何冊注文します、と伝えて用件などすべて終わって最後に、
 「……ワタクシ、ブックファースト梅田店の南口と申します」
 「……それでは復唱いたします。ブックファースト梅田南口店の…?」
というやりとりがしばしばなされてきたことに由来しています。

 たしかに、この姓はあまりポピュラーでないようなので、そうした誤解も理解できます。電話上では何事もなく、後に本が入荷したときに挟まれていた注文短冊に「ミナミブチ様」と書かれていたことも複数回あります(ロッテにいましたが…)。電話で漢字を訊かれて説明することも多いですが、「東西南北の南に、顔にある口」のように言っていたところ、「顔にある口」という表現があまりに馬鹿な気がしてきてやめました。今ではもっぱら「駅の出口とかにある…新宿南口とかみたいな…」とある種さらに馬鹿っぽい説明になっています。生粋の大阪人でありながら東京の駅名を例にあげねばならないのは少し悔しいですが、「宝塚南口」というのも中途半端な気がするので……。わが郷里では何軒かある姓なんですけどね。

 突然ですが、最近、テレビの深夜放送がおもしろいと思います。
 私は昔からお笑いが好きで(この“お笑い”という用語には違和感を覚えますが、他にぴったりする語が思い浮かばないので“お笑い”とします。“バラエティ”ではない)、深夜放送にはテレビ・ラジオ問わずお世話になってきたクチですが、しばらく前までの深夜放送の状況はお寒いものだと思っていました。しかし、ここ最近、面白い。

 勤務シフトの関係で、火曜・水曜はいつも日付が変わる前後に帰宅します。そこから腹ごしらえ(最近あんまり言いませんよね)をしたりするわけですが、同じシフトを繰り返すうちに深夜テレビの閲覧パターンも確立されました。
 まず、火曜日は帰宅すると「たかじんONEMAN」にチャンネルを合わせます。関西以外の方すみません。番組が後半に入った頃、「たかじん」に加え「“ぷっ”すま」と「考えるヒト(コマ)」をリモコンを酷使しつつ並行して見ます。そして至福をおぼえつつ就寝。
 水曜日は状況により「ジャイケルマクソン」(関西ローカルやろなあ)を見つつ、「Matthew’s Best Hit TV」をちらちら楽しみ、「松本紳助」を覗きながら最終的に「タモリ倶楽部」を見て陶酔しつつ就寝、という流れをたどります。これを書きながらそれぞれの番組の放送時間を調べてたのですが、やっぱり東京と大阪では編成が全然違いますね。

 以上の番組のほとんどは、最近始まったというものではありません。このほか企画にすぐれたかなりの数の新番組が放送されており、それこそが最近の深夜番組のおもしろさを底上げしているのです。上記中では「考えるヒト(コマ)」だけがごく最近です。
 これはダウンタウンがメインの番組で、出題されたテーマに沿って松本人志をはじめとする4人の解答者がヒトコマずつマンガを描き、4コママンガを完成させるというもの。それも、全員でまずヒトコマ目を考え、司会・浜田雅功がそのうちひとつを選んでヒトコマ目を決定、続いてまた全員でそれに続くフタコマ目を描き以下同様。言ってみれば大喜利の積み重ね、マンガで表現するあいうえお作文的なものです。フリップを使用しての大喜利芸は、かねてより他の追随を許さない松本人志の独壇場といった感がありましたが、通常の大喜利(そんなものがあるのか)でときたま見られる全員or ひとりが続けて「かぶせていく」パターンを、番組のルールによって半ば強制的にかつ濃縮したかたちで発生させている点におもしろさの構造的要因があるようです。ケンドーコバヤシとダウンタウンのカラミが見れるだけでも嬉しいのですが…。それにしてもしょこたんとは何者だろう。

 この番組で完成した4コママンガは提携する雑誌に連載されるようで、しかも掲載誌はさらに募集中で毎週増えている。しかも当初はコミック誌のみだったが近頃は「POPEYE」「JJ」(!)といったファッション誌にまで範囲が広がっている(「お試し期間」とはいえ、「JJ」はさすがに無理があると思う)。しかし、私はその掲載された雑誌の実物を見たことはないが、誌面で見ても全くおもしろくないと思うのだが。番組の流れの中で次々にかぶせていくライヴ感がおもしろいのであって、結果出来上がったものはべつにおもしろくない。というか、すでに番組内で出来上がった4コマをリピート再生する時点でおもしろくなくなっているのだが…。無論、あまりに番組内だけで完結しないよう、内輪ネタに終始しないよう松本人志が自己規制しているのは、土田晃之への「そんなんやったら俺もいろいろしたいわ」というツッコミからも明らかなのだが、やはり番組内でのおもしろさを誌面に移植するのは無理だろう。

 と思ったら最新の放送(関西6/21)ではほぼ禁じ手と思われるオチを披露した松本人志。どうなんだ。しかもこの回は完全に不完全燃焼(表現矛盾?)。さらにゲストのひとりのはずの羽賀研二が、オンエア上ではほぼ出演していないことになっている。どうなんだ「考えるヒト(コマ)」。

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