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第29回:~文章と私~

  2003年、明けてすぐの正月深夜 オリオン座に願いをかけたのですよ。
「今年は一度でも良いから雑誌とかに載ってみたいものだ」と。
 
 自宅から15分くらいの祖母の家で年越しの挨拶を済ませ、親族マージャンが始まるのを合図に独り抜け出し帰る夜道でした。結構周りの家からも明かりが漏れてて、そんなにセンチメンタルな気分ではなかったです。でもなんとなく「今年はこうするゾ」的な思いが溢れてきたのを覚えています。
 当時私はハチクロ応援団とかやる前で、取材とか受けたこと無かったんです。出版社さんの勉強会とかパーティで漫画系の有名書店員さんに沢山お会いして、皆さんの活躍を色んな所で拝見して少なからず影響を受けていたのでしょうね。漠然と「いいな~」「うらやましいな~」と思っていました。とは言え、その方々と比べてどう考えてもお店の規模が違う。同じ漫画担当でも売り場の広さが違えば売る本の数も違います。世の中の流れを追う雑誌の取材などが私のところに巡ってくるチャンスは0に近かった。注目を集める要素はあんまり見つからない状態でした。でも、ま、何もしないで立ち止まるのは性に合ってなかったので、まずはHPを作って日々の暮らしを文章にまとめることにしました。HPは不定期だった自分の休みの予定を出版社の営業さんにお知らせするため、として本当に内輪の仲が良い方だけの公開です。(※このHPは今は存在しません)
 はじめたは良いが、文章を書くというのは結構時間がかかる!たかだか10行くらいの文章に夜中の2時とかまでかかってしまって「世の中の作家さんはすっげーなー」と改めて感じたりして(笑)
 今流行のブログ作家のように、…というのでは無いのですが、しばらくして「新文化」という業界新聞の書店員の欄の連載のお話をいただきました。専用の原稿用紙を手渡された時は本当に嬉しかったです。半年の連載のテーマは、書店員としての「身の回りの身近な出来事」。書きたいエピソードは沢山あれど、苦しんだのは文字制限! 皆さんは人生の中で明確に「○○文字以内で」と指定を受けて文章を書いたことがありますか? 私は初めての経験でした。初めの何ヶ月かはボツが出るたびに原稿用紙をハサミで行ごとに切りとって文字数を合わせてましたよ。PCで文章を打つことにもなれていなかったのでそれが一番確実な方法でした。後に記者さんに「何故ながしまさんの原稿は枠線が消えてる所があるのか不思議だったよ」といわれて赤面したのも今ではよい想い出。
 「新文化」の連載をきっかけに雑誌の「Hanako」さんから文芸の書評のお話を頂き、こちらの「連載堂書店」のお話をいただきました。どのお話も嬉しくて嬉しくて、どんなに大変か考えることも無く「やります!やります!是非やらせてください!!」とお返事をしてしまいました。(習うより慣れろ、とは言いますが、文章のノウハウを知らないものですから関係者の皆様にはご迷惑をおかけしました。申し訳ございませんでした。)
 
 書店員としてリアル書店の現場(店頭)はそれはもう忙しく、毎日の作業がまるで熱病のように情熱と混沌の中にありました。文章を書くということはそんな生活の中で己と向き合えるクールな時間だったと思います。
 
 昨年末、ネット書店に転職してからやっと半年が過ぎました。本に対する情熱はそのままに、働き方はやはり違います。リアル書店の現場は戦いの最前線でわが身ひとつで剣を振るう感じで、今は同じ戦いでも作戦本部で膨大な量の資料を前にウンウン言いながら頭をひねってる感じ、です。
 
 コチラの連載の更新が出来なかった間、夢中で取り組んでいた企画が最近やっと立ち上がりました。セブンアンドワイ特別企画「コミックセット100 ~時代を映す思い出の漫画たち~」過去50年の漫画の歴史を年代ごとに振り返るというもの。あまたある日本の漫画の中から1960年代、70年代、80年代…と時代を代表する作品をセレクトして時代ごとに並べ、全巻セットにして販売してます。その数一気に122タイトル! この122という数は、セレクトするのには少なく感じても、全巻の在庫を何セットも用意するのには凄い量なんです。初めはおそるおそるだった在庫量もあまりの反響で追加につぐ追加で現在も手配に大忙しです! 準備期間は寝ても醒めても夢の中でも、この「コミックセット100」のことばかり考えてました。そして公開してからも、新たなる進化のため鬼のように毎日忙しいです。まだご覧になっていない方は是非、ながしまりえこ情熱の漫画フェアに遊びに来てください!!……と、まぁ文章で書いても熱がこもってしまいますね。
 
 こんな感じでネット書店の謎多き実像を文章にしたい気持ちはやまやまですがセキュリティ上、公開できないネタも多い業界です。残念ながら今回を最後に連載を終了させていただくことになりました。

 私は、いつでも“仕事”が楽しくてしょうがありません。古本屋さん時代もリアル書店勤務の時も、そして現在ネット書店に居ても。“書店員”である限りやりたい事が溢れてきます。文章を書くことへの情熱は一時静かになりますが、コチラでの貴重な経験を元にまた新しい「楽しい事」を見つけ出せたらいいなと思っています。
 
 今まで読んでくださった皆様 ありがとうございました
 またどこかで文字を通じてお会いできたら幸せです
 今度はモニターの向こう側にいる貴方の文章を読者の一人として私が読むというのもアリかも知れませんね。「我こそは次世代の書店勇者ナリ」と思う方がいらしたら是非とも本の雑誌社様までご連絡を。熱い熱い冒険譚を楽しみにしております。

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