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第4回 「青葉台書店戦争(1)」

 2月19日、文教堂の「青葉台駅前店」がOPENした。
 文教堂といえば明治創業の老舗、業界屈指の大手チェーンである。大型店なら紀伊国屋、中型以下なら文教堂が、日本の書店のスタンダードと言ってもいいだろうか。

 青葉台には前から文教堂の店があったが、この度、ブックファーストの進出を迎え撃つために、新たに3層・400坪の大型店を出店した。「青葉台書店戦争」の始まりである。

 青葉台というのは、ある調査によれば日本で最もブロードバンドの普及率が高い街だそうだ。東急田園都市線のブランドイメージを背負って立つ新興高級住宅街である。経済的余裕と知的好奇心。書店としては最高の商圏といってよい。

 OPEN早々の新店を見てきた。出版社など業界の関係者と思われる「スーツ族」が多くて異様な雰囲気ではあったが、明るくてスッキリとした、なかなかいい店だった。

 まず1階に雑誌と新刊。その奥に、生活実用書と地図がある。地形図もあった。壁面に面陳列(表紙を見せて陳列すること。平積みの縦置き?)用のスペースが大きく確保されていて壮観。新刊コーナーも完全面陳列で、かなりヴィジュアル重視の構えである。

 2階が文庫・文芸と、専門書。理工書も含めてなかなか硬派な品揃えで、正直言ってびっくりした。什器(本棚)の背が高いので、パッと見の広さから想像するより蔵書量が多い。楽譜や洋書も扱っていて、住宅街の書店としては申し分のない「本格派」と言える。

 3階はコミック・学参・児童書と、主にキッズ~ティーンズを対象にしたスペースになっている。コミックがビニールパックされずに並んでいたが、開店に間に合わなかったからなのか、そういう方針なのか。立ち読みOKということになると、これまた集客要因にはなるのだろうが、本の汚破損をどう防ぐかは検討課題だ。

 さすがにOPEN早々ということもあって、店員に漲る気合は相当のものと感じられたが、例えば1階で、ある男性店員に「音楽の本はどこですか?」と聞いてみたところ、「2階でございます」と言いながら、ちゃんと2階まで案内してくれようとした。あまりに悪いかと思ってそれは辞退したが、なんとしても満足して帰ってもらいたいという強い意志は確かに伝わってきた。この状態が日常化するのであれば(つまり最初だけでなければ)、「いい店」になっていくだろうと思う。いろいろあるが、やはり現場の従業員が「いい店」にしたいと強く思っているかどうかが、その店の将来を決定的に左右するのだ。

 1階のフェアコーナーで、「スローライフをはじめよう」というフェアをやっていた。「スローフード」の本や白洲正子の本などが並んでいたが、これがなかなかよかった。実は私も似たようなフェアをやりたいと思っていたところなので、ちょっと「やられた」という気もしたのだが、私ならアレも並べるなあ、などと想像しながら楽しんできた。

 3月1日には、いよいよブックファーストがOPENする。どのような戦いになるのか、客としても同業者としても、注目を続けたい。

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