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第26回:~錦町からこんにちは~

 さて、転職です。
 転職活動にあたってまず私がしたことは「髪を黒く染めること」「コンタクトを作ること」「面接用のスーツを買うこと」でした。普通は履歴書や職務経歴書を用意したり、転職情報を集めるほうが先なのでしょうが、私の場合はまずはカタチから。外見を変えるとビシッと覚悟が決まるものですよ。流石に家でスーツを着て履歴書は書きませんが、容貌が変わると「どうしたの?」と周囲の人に声をかけてもらえます。そこで「今、転職活動中だから!」と答え、答えた自分の言葉で更に覚悟を固めていく…“自分追い込み作戦”に有効です。
 
 よく春先にみかける会社訪問の大学生の格好は俗に「リクルート・スーツ」といいます。黒いスーツ、白いブラウス、黒髪は後ろにひとつに縛り、靴や鞄も飾り気の無いもの。リクルート・スーツは就職活動には適切な格好ですが、一番に「清潔感」を打ち出す為のコスプレだと私は思っています。まったく同じ格好を私がやると、清潔感というより「貧相で地味な印象」に感じるのです。リクルート・スーツはピチピチで若さ張り切れんばかりの世代が一番似合うのでしょう。キャリアをできるだけ生かし、年齢というハンデを上品に見せるための転職用戦闘服ってどんな感じなのでしょうか?
 今持っている服を活用するのもいいのですが、やはり気合を入れるために安くても新品のスーツを買いに行きました。色々試着をした結果、少し光沢のある黒のスーツに顔色の良く見える濃い目の水色のブラウスに決定。ブラウスは襟が高めで大きいものを販売員さんが選んでくれて、スーツの襟の上に出すとキリリとしてキャリアっぽいですよとの事。なるほど。ついでに髪型やお化粧の色なんかも相談に乗ってくれて、販売員さん、流石プロっ!て感じです。
 山下本店の閉店に向けての準備も少しあわただしい中での転職活動は、時に心細く、不安で押しつぶされそうになりました。ストレスで口内炎がいっぱいできました。でもイザ面接、という場面で笑顔が出せたのはこのスーツのお陰かもしれません。
 
 すでに 山下本店をやめ、新しい職場で慌ただしい日々を送っていますが、実は就職活動はまだ続いているんです。
 …というのも自分の事ではありません。かつての職場での後輩たちの事。
 山下本店で私と一緒に働いていた女性アルバイトさんが2人、「書店員になりたい」と言ってくれたのです。もちろんアルバイトさんでも本屋さんである事に違いはありませんが、今まで芸術系の仕事を目指していてフリーターさんだったのが本業として本屋に就職を決意。残念ながら山下書店では現在社員募集はしていないので、この2人も転職、そして「初めての就職」という訳。
 さて、今度はフリーターさんの就職活動ってどうするの? 
 2年、3年一緒に働いてきた仲間なのでリエコさんも全面的にバックアップ!
 就職とか転職って大勢の人の中から選ばれなければならないので、対策とか練りに練って、その上で自己をアピールしたほうが良いと思います。社会経験がすでにあるフリーターさんならそれを生かした職務経歴書や志望動機レポートが書けるはずです。その辺を2人にアドバイス。山下本店でのフェアなどの記録や写真も2人が関わっているものは用意して渡しました。素材はそろった、後は「明日につながる自分史を履歴書にこめろ~」と応援応援。無事、就職が決まると良いのですが… 
 
 ついつい前職の山下本店についてのお話になってしまいますね。ついでにご報告をすると、山下で私が始めた「自腹~s」という自発的書店販促活動も、他の書店さんが団長となり続いています。そして上記の彼女たちが書店業界でバリバリ活躍してくれたらまたそれも私の心の財産になると思います。 山下のコミック全体のお仕事も全て引き継いできました。
 
 物、人、思い出、歴史、全てが財産です。「炎の営業日誌」で杉江さんが山下本店の棚が涙を流していた、と書いてありました。そう、閉店はものすごく悲しいけれど、どうかあまり悲観的にならないで下さい。40年の歴史のなかで様々な本との出合いをお手伝いしてきたお店です。沢山の人の心の中で本の思い出と共に、ふと「熱い本屋が新宿にあったな」と思い出していただければ、いつでもそこに山下本店はあるのです。
 
 私が大好きなアーチストさんの歌に「ラスト・ステージ」という曲があります。
“ラストステージもう二度と愛の歌は歌わない…”
 コンサートの最後に情熱的に歌われます。なぜかいつも励まされていたこの歌、悲しい歌詞なのにね。この歌の意味が「ラストとは決して終わりではなく明日への新たな決意」だと最近知りました。歌い方や演奏の仕方で伝わっていたので やっぱりこの曲は明日への希望の歌なんだ、と改めて納得しました。
 
 私も、がんばろう!!と再度、熱血決意。私達のこれからの頑張りが山下本店を過去のものにしないひとつの方法かも知れないですしね。
 NET書店の「イーエスブックス」でいつか面白いことやりますよ。新しい職場では超・新人で頑張ってます。一番のネックはパソコン操作! うお~エクセルって何? 熱い思いで入った職場はIT業界風でした(笑)。ブラインドタッチできないの私だけ???
 でもNET書店もやはり「熱い本屋」ですよ。みんな「本」に対して真摯です!
 古本屋さんから新刊書店に転職して生かせたことが沢山あります。だからIT業界のノウハウを取得した私を楽しみにしててください★★★

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