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第7回   「面白い雑誌が読みたい」

 週刊百科の刊行ラッシュはとどまるところを知らず、今週もまた『週刊 日本の街道』(講談社)、『週刊 日本の美をめぐる』(小学館)、『アルクのabc』(アルク)と3点が創刊された。全号そろえると結構な値段になるが、1号あたりの安さがとりあえず成功の秘訣だろうか。飛ぶように売れるのはたいてい創刊時のみで、次第に購読者が減り、最終号の頃には「いつ終わったの?」というくらいひっそりと終わっていくものだから、作るほうも次々と創刊せざるを得ないのかもしれない。

 しかし個人的には興味のわく企画が少ない。「世界の文学」や「スターウォーズ」は少し気になったが、買うほどではなかった。例えば「週刊 日本の現代文学」創刊号…大江健三郎、だったら買うだろう。または「週刊 日本のミュージシャン」創刊号…坂本龍一、でもいい(山下達郎でも我慢しよう)。「週刊 テレビドラマの名作」創刊号…ロングバケーション、というのはどうだろうか。結構売れそうだ。

「週刊 現代思想」創刊号…デリダ、なんていうのがあったらちょっと感動するけど、これはあんまり売れないかな。でも、手軽にわかった気分になれる、という週刊百科の企画意図からすると、悪くないと思う。あっ、「週刊 日本の出版社」創刊号…岩波書店、なんていいんじゃないだろうか。無理? まあ無理だろう……。

 週刊百科に限らず、毎号欠かさず買うような雑誌が非常に少なくて面白くない。いま毎号購読しているのは音楽誌の『SNOOZER』(リトルモア)と『cookie scene』(ブルースインターアクションズ)だけだ。そういう専門誌はともかく、一般誌が総じてつまらないような気がする。というか、どれもこれも似たような雑誌ばかりで、点数は多いのに、実質的な選択肢は少ない。渋谷陽一が『SIGHT』(ロッキングオン)を創刊すると聞いたときはだいぶ盛り上がったのだが、どうも期待したものとは違った。もっと時事評論的な部分で他の論壇誌に対抗するようなものを作ってくるのかと思ったのだが、実際は『Pen』や『Esquire』に近い特集主義の雑誌だった(カタログ誌ではないが)。『世界』や『論座』は面白いことの方が少なく、それに比べると『正論』や『諸君』の方が企画力はあるような気がするが、思想的にはあまりに遠く、そうすると結局『噂の真相』でも読むか、ということになってしまうのだが、この雑誌、ビジュアル的には全く楽しめない。最近創刊された『DAZED&CONFUSED日本版』(アーティストハウス)は、ついに!という喜びはあるものの、本国版に比べると写真に刺がなく、記事もいまひとつ焦点が合っていないような印象がある。

 特集に興味を持って買う、ということはもちろんあるが、そうではなく、雑誌そのものの味でひきつけ、普段は興味を持たないような内容の記事まで読ませてしまうような、そういう雑誌が欲しいと常々思っているが、なかなか現れないものである。

 ところで、毎月7日は文芸誌の日だが、今月は、『新潮』(新潮社)に島田雅彦の「未刊の辞」が掲載され、『彗星の住人』の続編として書かれた(既に書かれた!)『美しい魂』が結局刊行されないことが明らかになった。詳しくは『新潮』を読んでいただきたいが、書いた作品が出せない/読めないということは実に不幸なことである。「自由」は決して安定供給されるものではない。

 同日発売の『文藝』(河出書房新社)は、タイミングよく島田雅彦特集。妻・ひとみさんが登場するという珍しさも含めてなかなか面白かった。

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