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第5回:~書店員と私~

 先日、いつもお世話になっている営業さんが 凄く真剣な顔でご来店。
 なんか発注ミスでもあったのだろうか?とモヤンと不安になりかけた私に「本日はお願いがあってまいりました…お忙しい中大変恐縮なのですが、今度私どもでこんな企画を立てまして、是非、ご協力いただけたら……」と。
 
 小池書院さんと大阪芸術大学のコラボの漫画誌「河南文芸 漫画篇」vol.4にコミック売り場の担当者のアンケートのを載せて、これから漫画のプロを目指す学生さん達に読者との距離が一番近い売り場からの声を聞かせてあげたいそうな。企画の名前は「マンガの現場 10の質問」(仮題) え~~~面白そうじゃん。やるやる 全然OK!!~、という言葉をごくりと飲み込み、「私個人としては大変興味を惹かれるお話ですが、上の者に相談してから後日お返事します。」とこちらも神妙にお返ししました。取材とか原稿依頼はお店の宣伝にもなるので なるべく受けるようにしています。ただ私以外の上の方々に話を通してからじゃないと嫌なの。これは会社の決まりじゃなくって私の中の”Myルール”。
 たいていの場合、店長は私と同じく「面白そうじゃん、やってみれば?」と部長に回し、部長は「コレとコレには気をつけてね 過去にこんな例があるから」とNGになりやすい点を教えてくれます。そんで最後に社長から「頑張ってください」といわれて、承認が取れてGOサイン。企画突入。

 さて「河南塾 漫画篇」という漫画誌は芸術関係には特に高名な大阪芸術大学のテキストとしても使われますし、普通に書店流通もしている面白い本です。今回ご参加の書店員さんは大阪12名、関東12名、リストを見せてもらうとコミック業界では超有名な方ばかりでリエコさんはちょっとプレッシャーです……ま、やるからには全力で頑張りましょう!!
 アンケートの項目は10個。項目によっては「個人的に」など注釈がついているものもありますが、全体的に書店員(販売員)としての意見を書いた方が良いみたい。でも真面目に書きすぎると読んでる人は飽きちゃうよねー24人分だもんねー。む~~~。

 1)あなたの書店員歴、コミック担当歴と、貴店のプロフィール(力を入れているジャンル、立地条件、客層など)を教えてください。また、月にどれくらい本・マンガをよみますか?
 これはよく聞かれる事だな。大阪中心の本なのでお店の立地などはいつもより詳しく書いて、と。 
 問題は書店員暦、クゥ~、年がばれる……。
 2)漫画との最初の出会いは?
 3)思い出の作品や好きな作品、作家とその理由を教えてください(いくつでも)。
 4)「いま」貴店でもっとも売れている一冊、作家を教えてください。
 5)個人的に「いま」最も売りたい一冊、注目の作家は?
 
 悩み所の4連荘。なかなか上手い質問ですね。正直にこたえると その人個人が丸裸になって行く質問達。ただ、コレを何も考えないで答えてしまうと大変面白くないアンケートになってしまいます。だってこの本を読む人は私の事をたいてい知らない人ばかりだし、知りたいとも思っていないだろうから。(漫画家志望の方で1,000人に一人くらいは私の売り場を知っていて プロになった暁にはアノ売り場で自分の本が積まれるのが野望なんだ!という人がいたら是非お会いしたいのですが、これは書店員としてもドリームな感じですね。)彼らが知りたいのは現在の書店事情が分かるコメントでしょう? 嘘は書くつもりがないので、正直に答えたものにネタを加えて読みやすい形にしましょう。
 
 ふと、他のアンケート参加の書店の方々のお顔が思い浮かびます。東京の12人ほとんどが会ったことがあり、中でもお互いの得意分野を詳しく知ってる人が何人か居ます。アノ人ならこの設問はこのタイトル載せるだろうな。とか、彼ならココはすげー面白い事書くんだろうな。とか、あの人とはこのコメントかぶりそうだな。等々。
 私の得意分野は「少女漫画」で、ありがたいことに売り場の立地も客層も女性向けなので得意分野をそのまま展開できてます。中には自身の得意分野とは売り場展開が全然べつの方々もいるので大変そうです。
 本屋さんって“好きな本を好きなだけ展開できる素敵な職業”と思って業界に入ってきた人が、始めてぶち当たる壁がこれですね。「好きな本を売れない」という事実&現実。でもお仕事だから自分の望みとおりにならないのは当たり前で、自分の苦手な分野をどう克服して行くかが実は最も楽しい所なのです。苦手なジャンルこそ頑張って勉強して、売り場展開を試行錯誤して、大売れした時の充実感がもの凄い。客層にあった品揃えで売り上げは存分に上げてお客様に喜んでもらう。そんでコソッと売り場の隅のほうで本当に好きな本を思う存分コーナー作りする。こうするとストレスも溜まらないし、メリハリ・ワビサビ、充実感のある本屋になる事でしょう。

 話はそれてしまいましたが、設問6)以降も鋭いものが続き、設問を行きつ戻りつしながら3日掛かりでお答えしました。本の発売予定は4月末だそうです。ドキドキだなぁ。
 自分のも心配ですが、他の方々のお答えがすごーーーく知りたい!楽しみ!!
 もし機会がありましたらこそっと読んでみてくださいね。そんで1~10まで自分だったらどう答えるか、想像してみて下さい☆ 中には現役書店員じゃなければ答えられない設問もありますが、そこはそこ、本好きの皆様のお気に入りの本屋で「もしも自分が書店員だったら」と考えてみるのも一興。

 あとね、大阪や東京に近い方は、このアンケートを読んで、その足でその担当者が居る売り場に行くと面白いと思いますよ。個性的な各店の売り場が、その人のキャラクターがまんま出ているだけだったり(笑)。かと思えば、いかに会社のスタンスや客層と売り場担当者の好みの折り合いつけているか?の苦労している点が見えてくるかもしれません。本来、これからプロを目指す人に漫画の書き方を研究する本ですが、本屋ウォッチャーさんには、このページだけは本屋を研究するページになったりして……そこにはきっと現場のリアルがてんこ盛りです~★★★

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